マーケティングリサーチとは? リサーチの基本とコツを解説

マーケティングに強いと言われる会社ほどリサーチを多用していることをご存知だろうか。P&G、マクドナルド、ユニリーバ…。これらの会社に共通するポイントは「顧客をわかっている」と過信せず、マーケティングリサーチを常に、積極的に活用し、顧客の声に耳を傾け、その声をマーケティングに活かしているということだ。

この記事では、まずマーケティングリサーチの基本を簡単に説明する。その上で、企業が陥りやすい残念な失敗例を紹介し、失敗しないためのコツをお伝えしたい。

また、そもそもマーケティングとは何か、その基本から振り返りたい方は、以下の記事も参考にしていただきたい。

マーケティングリサーチの基本:まずは調査目的の設定から

マーケティングリサーチの定義

マーケティングリサーチとは、消費者を対象に調査を行い、そこから得られた情報を分析して消費者の認識、ニーズ、行動、嗜好などについてのインサイト(知見)を得るまでの一連の活動を指す。得られたインサイトはマーケティング戦略や施策に活用する。マーケットリサーチ、市場調査とも言われる。

まずは調査目的の設定から

マーケティングリサーチは、調査目的の設定から始めるのが基本。「特定の商品の売上向上」、「新規市場参入のための市場規模把握」といったように特定の課題を解決したり、市場・顧客の情報を得るために調査を行う場合もあれば、得られた情報がどの程度重要性が高いか計測する場合もあるし、仮説を立ててそれが正しいか検証する場合もある。

マーケティングリサーチで調査する内容

ゴールを設定したら、次にリサーチで何を明らかにするかを決める。市場参入が目的なら、市場規模の特定や、セグメンテーション、ターゲット顧客層とターゲット顧客層のニーズ、動機、嗜好を調査する。自社のサービスに対する顧客満足度、改善点などを定点観測したければリサーチするのは満足度、といった風に調査内容を設定する。

マーケティングリサーチで調査する主な内容

  • 市場規模
  • セグメンテーション、ターゲット顧客
  • 消費者ニーズ:消費者がどんな潜在・顕在ニーズ、価値観を持っているか
  • 購入動機:どんな動機で商品を購入している or していないのか
  • 嗜好:どんなものを好む or 好まないのか
  • 利用実態・認識:自社・競合ブランド、商品・サービスに対する認知・認識・利用実態
  • 満足度:商品についてどう感じたか、満足した点、不満足な点
  • 仮説検証:設定した仮説は正しいか
  • コミュニケーションプランの検証:コンセプト、コミュニケーション案は消費者に響くか…など

リサーチの目的を設定したら、調査方法を選択し、調査対象者を選定しよう

定性調査と定量調査

マーケティングリサーチの調査目的、調査内容を設定したら、次に調査手法を決定する。マーケティングリサーチの調査手法には、大きく分けて「定性調査」と「定量調査」がある。

「定性調査」とは

定性的な内容、すなわち、消費者の言葉や態度など、数値化できないデータをインタビューで直接聞き出したり、観察を通じて収集する調査方法で、消費者のニーズや価値観、購入動機、認知・認識などを幅広く、深く拾うのに有効。

「定量調査」とは

量的な内容、すなわち、調べたい内容に対する消費者の回答を数値化・計測することを目的とした調査方法。定量調査では消費者アンケートなどを通じて相当数の回答を集め、調査結果を分析して活用する。定量調査は、調査したい内容の重要度を測ることができるため、市場規模や消費者ニーズの特定、仮説の検証などに有効。

調査手法をひとつだけ選択して実施することもあれば、定性・定量を組み合わせて実施する場合もある。ケースバイケースだが、最初に定性調査で幅広く意見を拾ったあとに、定量調査でそれぞれの意見の重要度を図ったりすることもあるし、最初に定量調査を行い、市場規模や顧客のセグメンテーションを行ない、ターゲット顧客を設定した上で、ターゲット層対象者に対して定性調査を行うこともある。調査の目的に沿って選ぶのが良いが、こうした調査設計は最初は難しいので、自社に経験がない場合は、調査会社にアドバイスを求めると良いだろう。

【定性調査】の方法

  • グループインタビュー(フォーカス・グループ・インタビュー、FGI):グループ形式でのインタビュー調査
  • インデプスインタビュー(イン・デプス・インタビュー、IDI):1対1形式でのインタビュー調査
  • 訪問観察調査:調査対象者の自宅を訪問して、自宅での様子を観察しながらインタビューを行う調査
  • 行動観察調査(エスノグラフィ調査):消費者の消費場面を観察する調査。ショップアロングと言って、購入場面に立ち会ったり、利用場面を観察する調査などがあるが、最近ではネットを通じて普段の生活の様子や商品の利用場面、感想などを投稿してもらう形の調査もあり。

【定量調査】の方法

  • インターネット調査:ネット上のアンケート調査。幅広く短期間で多数の回答収集が可能
  • 郵送調査:アンケートを郵送し回答してもらう調査
  • 訪問調査:訪問してアンケートに回答してもらう調査
  • ホームユーステスト(HUT、ホームユーステスト):商品サンプルなどを送付し自宅で利用してもらった感想を返送してもらう調査
  • 会場テスト(CLT、セントラルロケーションテスト):あらかじめ用意した会場で、調査参加者から商品や広告などに対する感想や評価を書いてもらう調査。販売前の商品の試食・試飲や、広告テストなど

調査対象者の選び方

定性調査の場合

定性調査は1件のインタビューに最低でも1時間から2時間程度かけるため、予算や労力、時間の制約上、実施件数が限定される。そのため、ターゲット顧客の条件に当てはまる参加者を5〜10名程度選択して実施する。参加者は専門のリクルーティング会社を使って集めるのが一般的。

定量調査の場合

調査目的にもよるが、通常、定性調査にくらべて、より幅広い層を対象に実施する。対象とする市場の人口比率にあわせて男女・年齢・居住都道府県や年収といった条件で抽出したり、〇〇を使っている人、〇〇をしている人、と言った緩めの条件でリクルーティングを行う。参加者のリクルーティングから実施まで、調査専門会社を使うことが多い。

マーケティングリサーチ:よくある残念な事例と失敗しないための心得・コツ

多くの企業が調査結果を活かし切れていない

明確なゴールを設定し、調査を実施したにもかかわらず調査結果を活かし切れていない企業は多い。このような残念な状態に陥ってしまうのは、筆者が見てきた限りにおいては大企業の方が多いように思う。ここではよくある残念な事例を紹介し、次のセクションで、このような残念な状態に陥らないための心得、コツを説明しよう。

残念な例1:膨大な調査を実施したが、データや資料が膨大すぎて読み解けず、活用まで至らない

よく見られるのが、調査設計時に「とりあえずこれも聞いておこう」とよく考えずに大量の質問を設定してしまい、膨大な調査データを分析仕切れないケースだ。膨大なエクセルファイルと数百ページもの調査レポートはあるが、担当部署で十分に読み解けず、結果としてマーケティングに活かせていないのだ。そんなことはあるのか、と思われるかもしれないが、ハイエンドなコンサルティングにわざわざ調査を依頼したにもかかわらず、データを読み解くために別のコンサルを雇う企業もあるくらい、よくある事例だ。

失敗しないための心得1

マーケティングリサーチは、マーケティングに活かせなければ意味がない。ポイントは、調査目的を設定する際に、調査を通じて最も解明したいことを質問に書き出すのが良い。その上で、その質問の答えを得るための質問を積み上げて調査票(質問リスト)を設計するのだ。

例を挙げて説明しよう。例えばローションAは世界的にはすごく売れているのに日本市場では売上が低迷していた。Aのマーケティングチームは、調査の目的が「日本市場の顧客に受け入れられるコミュニケーション案」である場合に、担当者はどんな質問を立てたらよいだろうか。

たとえば、「日本の顧客はローションAに対してどういうイメージを持っており、どんな抵抗感があるのだろうか。どういうコミュニケーションをすれば受け入れられるのか」という質問を立てることができれば、調査では、顧客の認識・イメージ、抵抗感や、ローションの購入動機を調べ、さらにはコミュニケーション案をテストする、といった形で目的にしっかり使える調査にすることができる。

残念な例2:自社顧客に対してアンケート調査への協力を依頼したが、何ら改善がなされず、顧客に不満をもたれてしまう

リサーチの中には、自社顧客を対象に調査を行うケースもあるが、この場合は注意が必要。ある企業では、自社顧客に100問を超えるアンケートへの協力を依頼し、自社と競合他社についてありとあらゆる観点で質問した。想像してみて欲しい。数十問を超えるアンケートに回答するだけでも相当の苦痛だと思うが、多数の顧客がおそらく最低でも1時間はかけてこの調査に回答してくれたはずである。

ところが、この企業では顧客満足度のスコアを社内評価に利用しただけで、その他のアンケート項目については分析も行なっていなかった。そのため、顧客側から「アンケートに意見を書いたのに担当者から何の反応もない」と役員宛に苦情が寄せられ、急遽、全社でアンケートの内容を読み直して対応することになった…という事例だ。

失敗しないための心得2

調査の質問は、回答者がきちんと回答できる問題数にとどめるのが大原則である。アンケート調査なら15〜20分程度で回答できる範囲内、定性インタビューでも1〜1時間半程度が大半となっている。問題数を増やすと、回答者が真面目に答えてくれなくなったり、企業名を開示した調査では企業に対してネガティブな印象を与えてしまうリスクも生じる。また、自社顧客に調査協力を依頼する場合は、依頼の際に調査結果をどう活かすのかを説明しておくか、調査後に企業としてどう対応したかを簡単に説明したレポートを共有するなど、何かしらのフォローを行なうのがよいだろう。

他にも、定点観測調査なのに、担当者が変わる度に質問を加えたり削ったりして過去からの変遷がわからない調査になってしまったり、調査の分析ができる担当者がおらず、結果を十分に咀嚼(そしゃく)できないなど、残念な例はまだまだたくさんある。定点観測調査であれば、大半の質問は固定にすべきであるし、分析ができない場合は、担当者を社内に置くか、あるいは調査会社に「マーケティングに活用できる形」でアウトプットを出してもらうといった対応が必要になるだろう。

リサーチは顧客ニーズにマッチしたマーケティングを行うための貴重な情報源

良い商品を作っていれば商品が売れるとは限らない。顧客ニーズに合わせたマーケティングを行っていなければ物は売れない。だからマーケティングに優れていると言われる企業であっても、消費者の声に耳を傾け、それに沿ったマーケティングを実施すべく、リサーチを行うのだ。

コロナ禍によって、今ではほとんどのマーケティングリサーチがオンラインで対応可能となり、より低コストで効率よくリサーチができるようになった。最初のハードルは高いかもしれないが、コンサルや調査会社をうまく活用し、リサーチにチャレンジしていただきたい。

また、他にも以下のような記事がある。マーケティングに興味がある方は、合わせてお読みいただきたい。

・マーケティング戦略に関するマイケル・ポーターの講演のうち、筆者が感銘を受けたものからエッセンス部分を抜粋して日本語でまとめた。企業にとって非常に重要なマーケティング戦略について、正しく理解していただきたい。

・マーケティング担当者が抑えるべき主要なフレームワークを解説した。マーケティングの基本戦略を作る上で、必ずといっていいほどフレームワークは必要となる。マーケティングを学ぶ必要に迫られた管理職、新たな戦略を作る上でこれまでと違うアプローチを取りたいマーケティング担当者など、時間のないビジネスマンが必要な所だけを参照できるように構成している。

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Ryoji Takada

Ryoji Takada

座右の銘は質実剛健。PDCAをやり遂げプロジェクト収益化まで愚直にやるのは得意分野。あだ名は夜桜で、昔は格闘技のプロであった時の名残。バイクとファッションと格闘技が好き。

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